オーストラリアの元副首相であり、かつて国民党の党首を務めたバーナビー・ジョイス氏が、次回の連邦選挙で長年代表してきたニューイングランド選挙区に再出馬しないことを発表しました。この決断は、彼自身が「国民党指導部との関係が修復不可能なほど破綻している」と語ったことに端を発しています。
ジョイス氏は声明の中で、現在の党執行部との関係を「一部の結婚における悲しみのように壊れている」と表現し、国民党内での深刻な対立構造を明らかにしました。この発表は、連立政権を構成する保守勢力にとっても大きな衝撃を与えています。
「不協和音」となった存在:党内での立場悪化
ジョイス氏は声明の中で、自身の政治活動に対して党内からの圧力が強まっていたことを具体的に示しました。
- 選挙活動の制限: 「連邦選挙期間中、私はニューイングランド以外で選挙活動を行わないよう指示された。それは国民党の見解を代表しないからだ」と説明。
- 「世代交代」の名の下での排除: 選挙後、「世代交代」の名目で異動させられたことに言及し、党内での影響力低下を示唆。
- 孤立の実感: 「党内の雰囲気、そして私が議場の連立政権の最も遠い隅に座っていることで、私は目障りな存在となり、今や不協和音と化している」と述べ、孤立感をにじませました。
「ネットゼロ」政策への強い反対:決別の引き金に
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ジョイス氏が党指導部と決裂した最大の要因の一つが、国民党が掲げる「ネットゼロ(温室効果ガス排出実質ゼロ)」政策への反対です。彼はこの政策が地方経済や国防、貧困層に悪影響を及ぼしていると主張しました。
ジョイス氏は、「我々のネットゼロ支持の立場は、私の選挙区、中小企業、環境、貧困層、そしてオーストラリアの防衛に甚大な損害を与えている」と批判。さらに、「この政策が私のコミュニティの長年の友人たちの間に憎しみを生み出している」と述べ、政策の分断的影響を訴えました。
そのうえで、「この政策の下でキャンベラの国民党党議室に留まることは不可能だ」と明言し、出馬断念を「信念に基づく決断」と位置づけました。
政界引退ではなく「新たな挑戦」へ
ジョイス氏は、今回の出馬断念が政治的キャリアの終焉を意味するものではないと強調しています。今後の進路については慎重に検討中であると述べ、将来的に上院選挙への出馬も視野に入れていることを示唆しました。
特に注目を集めたのは、「ワン・ネイション党からの立候補を排除しない」と語った発言です。これは、ジョイス氏が既存の保守連立を離れ、より右派的な立場から政治的影響力を模索している可能性を示しています。
今後への影響:国民党と保守連立への波紋
ジョイス氏の撤退は、国民党にとって地盤喪失と保守層分裂のリスクを伴います。ニューイングランド選挙区は長年ジョイス氏の支持基盤であり、同氏の存在が連立政権の地方票を支えてきました。
そのため、彼の不出馬は次期選挙戦における国民党の戦略見直しを迫るものとなりそうです。政治アナリストの間では、「ジョイス氏の離脱は党内右派の反発を呼び、政策調整に影響を及ぼす可能性が高い」と指摘されています。
一方で、ジョイス氏が新たな政治の場で再び影響力を発揮する可能性もあり、彼の今後の動向はオーストラリア保守政治の行方を左右する重要な要素となるでしょう。


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