トランプ政権、数千人規模の連邦職員解雇を強行：行政機能の低下に懸念

解雇開始の経緯と現在地

米国の政府機関閉鎖が続く中、トランプ政権は連邦職員の「RIF（人員削減）」を開始しました。ホワイトハウス行政管理予算局（OMB）のラッセル・ヴォート局長は、X（旧Twitter）への投稿で開始を明言。これにより、与野党の対立が続く予算協議にさらなる圧力がかかる格好となりました。政権側は、この削減が「相当な規模」で進んでいるとし、少なくとも複数の省庁・機関で解雇手続きが始まったことを認めています。

対象とされる機関と規模感

報道によれば、解雇は少なくとも7つの連邦機関に及び、影響規模は数千人に達します。財務省や保健福祉省（HHS）など主要省庁で通知が出され、国土安全保障省（DHS）でも一部部局の職員に影響が及ぶ見通しです。政府閉鎖中の人員削減は、通常業務の遅延に拍車をかける恐れがあり、行政サービスの提供に実務的な支障が出るリスクが高まっています。

法的手続きと実務への影響

連邦法は、人員削減による解雇の際に少なくとも30日前の通知を義務付けています。今回の一連の手続きも同要件を踏まえて進められているものの、現場では重要業務を担う部署にまで波及する懸念が拡大。特に安全保障や公衆衛生、財政運営など「不可欠」とされる領域で人員が薄くなれば、サイバー防衛、感染症対応、歳入・給付事務などで目に見える遅延や機能低下が生じる可能性があります。

政治的思惑と交渉戦術

トランプ大統領は政権発足当初から「行政のスリム化」を掲げてきました。今回のRIF開始は、政府閉鎖という異常事態をテコに、歳出や政策面で自らの要求を通すための圧力手段であると同時に、長年の政治目標の具体化でもあります。与野党の対立が長引くほど現場の摩耗は避けられず、解雇の実施と再雇用・配置の見通し、重要サービスの維持計画など、政権側の説明責任はいっそう重くなっています。

行政機能の持続性に関する懸念

人員削減は単に人件費を圧縮する作業ではありません。審査・監督・支払い・防衛・研究など、官庁のコア機能は専門性に依存しており、知識や技能の断絶は短期的な停滞だけでなく長期的な制度疲労を招きます。とりわけデータ公開や統計作表の遅延は、民間・地方政府・投資家の意思決定に連鎖的な不確実性をもたらし、景気や市場のボラティリティを増幅させかねません。

今後の焦点

最大の焦点は、（1）政府閉鎖の早期解消、（2）RIF対象範囲と人数の正式確定、（3）不可欠業務の維持策、（4）解雇対象となる職員の権利保護と再配置支援の4点です。政権と議会が合意に至らず閉鎖が長期化すれば、連邦政府の執行力はさらに低下し、国民生活や安全保障、経済運営への影響が拡大することは避けられません。

出典

BBC News: https://www.bbc.com/news/articles/c1mxd1g71vxo?at_medium=RSS&at_campaign=rss