女子プロバスケットボールリーグ(WNBA)の頂上決戦は、ラスベガス・エーシズが圧倒的な完成度で締めくくった。フェニックス・マーキュリーとのファイナル第4戦を97–86で制し、シリーズは4勝0敗のスイープ。過去4シーズンで3度目となる王座奪還により、エーシズは名実ともに新時代の「王朝」像を固めた。
決定的だった第4戦――主導権を渡さない完勝
第4戦のエーシズは立ち上がりからゲームのテンポと空間支配を確立。外角の間引きとペイントアタックを巧みに織り交ぜ、マーキュリーの守備を横にも縦にも伸ばした。中盤に相手の反撃で点差を詰められる時間帯はあったが、要所のリム守備とフリースローで流れを再度自軍へ。終盤はリズムを崩すことなく二桁リード圏をキープし、危なげなく勝ち切った。
アジャ・ウィルソンが示した“支配”――31点・9リバウンド・FT17/19
シリーズを通じて圧をかけ続けたのがエースのアジャ・ウィルソンだ。第4戦はドライブとポストアップの併用でファウルを量産し、フリースロー17/19の高確率。数字に表れた効率の裏側には、相手インサイドのローテーションを遅らせる空間作りと、ダブルが来た場面での決断の速さもある。スタッツラインは31得点・9リバウンド。これによりウィルソンは2度目のファイナルMVPに輝き、今季の存在感を象徴する勲章を手にした。
脇を固めた主力陣――ゲームマネジメントの成熟
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エーシズの強みはウィルソンの個で完結しない。ハーフコートでの二次加速を生むハンドラー陣、トランジションで走り切るウイングの厚み、要所のスリーポイント……。第4戦でも複数の選手が二桁得点で支え、相手が連続得点で迫るたびにショットセレクションとラインナップ調整で失点を最小化。大舞台での意思統一とゲームマネジメントの成熟度が、4連勝という結果に直結した。
フェニックスの抵抗と課題――追撃の糸口は作れたが
マーキュリーも第4Q序盤にかけてアタック回数を増やし、トランジションとセカンドチャンスで反撃のきっかけを掴んだ。だが、ターンオーバー由来の失点とファウルトラブルが痛手となり、詰めの局面でショットの選択肢が限定。エーシズの高水準な守備リセットに対抗するには、終盤のプレイコールとスペーシングの緻密さがもう一段求められた。
「3冠/4年」の意味――リーグの基準を引き上げる
過去4季で3度の優勝は、戦力の補強と育成、戦術のアップデート、そして健康管理までを含む総合力の勝利だ。プレーの強度と規律をシーズンを通して維持し、ファイナルでピークを合わせる再現性は、他チームが乗り越えるべき“新しい基準”になった。次季以降、各クラブはロスター設計とラインナップの多様性、終盤のクラッチパッケージの質をどこまで引き上げられるかが問われる。
今後の展望――王朝の深化か、包囲網の逆襲か
ウィルソンを軸としたエーシズのコアはなお全盛期にあり、若手とベテランのバランスも良好だ。連覇経験による“勝ち方”の知識が世代を超えて共有されている点も強みだろう。一方で、リーグ全体は拮抗度を増し、対エーシズ用の対策(ヘルプローテーションの再設計、ペイントタッチ数の削減、ファウルゲームの最適化など)が加速するはずだ。2026年へ向け、エーシズがさらなる進化を遂げるのか、挑戦者が包囲網を完成させるのか――WNBAの勢力図は一段とスリリングになる。
試合概要
- WNBAファイナル 第4戦:ラスベガス・エーシズ 97–86 フェニックス・マーキュリー
- シリーズ結果:エーシズ 4–0(スイープ)
- 主要成績:アジャ・ウィルソン 31得点・9リバウンド・FT17/19(ファイナルMVP)
出典
ABC News: “Las Vegas Aces sweep Phoenix Mercury in WNBA Finals for third title in four seasons”(https://www.abc.net.au/news/2025-10-11/wnba-finals-las-vegas-aces-phoenix-mercury-game-four-aja-wilson/105880922)


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