1978年にオーストラリアのクイーンズランド州奥地で発生した未解決殺人事件「スピア・クリーク殺人事件」。約半世紀を経た今、この事件の真相解明を目的とした2度目の再審問が始まりました。被害者は、バイクでオーストラリア内陸部を旅していた3人の若い観光客 — カレン・エドワーズさん(23歳)、ティモシー・トムソンさん(31歳)、そしてゴードン・トワドルさん(22歳)。彼らは1978年10月、マウント・アイザ北部のスピア・クリーク付近で射殺体として発見されました。
荒野の悲劇:事件の概要と最初の発見
事件が明るみに出たのは偶然のことでした。グレイハウンド犬を散歩させていた夫婦が、野生の豚を追うペットを探していた際、後にティモシー・トムソン氏と特定される遺体を発見したのです。現場は荒涼としたブッシュ地帯で、彼らがバイク旅行中にキャンプをしていた形跡がありました。付近からは3人の持ち物やバイクの一部が見つかったものの、犯人の手がかりや動機は不明のままでした。
当時の警察は広大な奥地と限られた捜査手段の中で捜査を進めましたが、結論には至らず。事件はやがて「クイーンズランドの最も謎に満ちたコールドケース」として長年封印されてきました。
再審問の焦点:現場にいた「謎の人物」
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今回の再審問では、当時3人と行動を共にしていたとされる人物の身元や証言が最大の焦点となっています。検視法廷は、1978年当時の証拠資料と新たな科学的分析結果を照合しながら、事件の真相に迫る構えです。
クイーンズランド州の裁判担当記者ルーシー・ロラム氏によると、警察は当時現場にいたとされる複数の人物を再調査中とのことです。特にDNA技術の進歩が、長年の謎を解く鍵となる可能性があります。
科学の力:DNA技術がもたらす希望
47年前の証拠品から採取されたわずかな生体サンプルが、現代のDNA解析技術によって新たな発見につながる期待が高まっています。過去に未解析だった繊維や弾痕、体液のサンプルが再評価され、科学が「時効なき正義」を支える時代が到来しているのです。
また、当時沈黙していた関係者や目撃者が、年月を経て新たな証言を提供する可能性も指摘されています。再審問は、彼らが安心して真実を語るための公的な場として機能しています。
オーストラリア社会が示す「正義への執念」
このスピア・クリーク事件の再審問は、オーストラリア社会がどれほどの年月を経ても正義を追求し続ける姿勢を象徴しています。被害者の家族は、数十年にわたり不確実な現実と向き合い続けてきました。「ようやく真実に近づけるかもしれない」という彼らの思いは、再審問の法廷に重く響いています。
審問の最終結論はまだ出ていませんが、この取り組み自体が未解決事件に新たな光を当て、犠牲者の尊厳を守る重要な一歩です。世界中でコールドケースの解決を願う人々にとって、この審問は希望の象徴ともいえるでしょう。
出典:ABC News(2025年10月7日)


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