オーストラリア首都特別地域(ACT)が薬物非犯罪化法を施行してから2年が経過しました。この大胆な政策は、2022年にコカイン、ヘロイン、MDMA(エクスタシー)、メタンフェタミン(アイス)などの少量所持を刑事罰の対象から外し、薬物使用を「犯罪」ではなく「健康問題」として扱うという、全国初の取り組みとして導入されました。
この非犯罪化法の下では、個人使用量の薬物で摘発された人々は刑事訴追を受ける代わりに、罰金の支払いまたは薬物カウンセリングへの参加が求められます。ACT政府は、この制度を「危害軽減」と「治療へのアクセス向上」を目的とする改革と位置付けています。
擁護派が見る成果:スティグマの低減と支援の前進
擁護派は、制度導入によって薬物使用者への社会的スティグマ(偏見)が和らぎつつあり、支援機関に助けを求める人が増えたと指摘します。また、刑事罰の代わりにカウンセリングや治療につながることで、依存症からの回復を目指す人々が増え、公衆衛生上の前進が見られるとの見方もあります。
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このアプローチは、人権の観点からも意義があります。薬物使用者を「犯罪者」ではなく「治療を必要とする患者」として扱う姿勢が、国際的にも評価されているのです。擁護派は、「非犯罪化によって初めて、薬物依存が社会的に理解される基盤ができた」と語ります。
反対派の懸念:政策の実効性と副作用
一方で、反対派からは「法律が意図通りに機能していない」との批判が出ています。警察関係者や一部の市民は、罰金やカウンセリング制度の実効性に疑問を呈し、違法薬物の使用拡大を懸念しています。特に、若年層が刑事罰を恐れず薬物を試すリスクが高まったのではないかとの声もあります。
また、制度導入から2年を経ても、明確な統計的効果が示されていない点も議論を呼んでいます。非犯罪化の目的である「健康被害の抑制」や「治療アクセス向上」が実際にどの程度達成されたのか、現段階では判断が難しいのが実情です。
政府の次のステップ:政策評価レビューへ
ACT政府は、間もなく非犯罪化法の効果を正式に評価するレビューを実施する予定です。この調査では、薬物関連の過剰摂取件数、治療・カウンセリング利用者数、薬物関連犯罪の変化、そして刑事司法制度への影響など、多角的な指標が検討される見込みです。
このレビューの結果は、今後の政策方向を左右するだけでなく、オーストラリア全体の薬物政策の見直しにも大きな影響を与えると見られています。ACTは国内で唯一、薬物非犯罪化を実施した管轄区域であり、その成果と課題は他州にとっても重要な教訓となるでしょう。
出典:ABC News “ACT two years on from drug decriminalisation laws sees ‘signs of change’”
 
  
  
  
   

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