オスカー俳優ダニエル・デイ=ルイスが、7年間のスクリーン休止期間を経て遂に映画界へ復帰しました。最新作『アネモネ (Anemone)』のロンドン映画祭プレミアに登場した68歳の彼は、長年囁かれてきた「引退」の噂を、自らの言葉で否定しました。
引退報道の真相と誤解
デイ=ルイスが最後にスクリーンに出演したのは、2017年のポール・トーマス・アンダーソン監督作『ファントム・スレッド』です。公開に先立って、彼の代理人は「俳優業からの引退」を正式に発表しました。
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しかし今回の報道で、本人はこの「引退」という言葉が誤解から生じたものだと強調しています。「誤解を解くために言っておきますが、私は『引退』という言葉を一度も使っていません。人々が私の代わりにそう言っているだけです」と述べました。
さらに、近年のインタビューでは「本当は引退するつもりはなかった」という言葉も語られており、彼の休止はあくまで一時的なものに過ぎなかった可能性が指摘されています。
復帰作『アネモネ』と親子協働
今回のスクリーン復帰作となった『アネモネ』は、彼にとって特別な意味を持つプロジェクトです。舞台裏には、息子ローナン・デイ=ルイス(Ronan Day-Lewis)が監督・共脚本を務めており、父子の共同執筆作品として注目されています。
デイ=ルイス自身によれば、この作品に関わる機会が、休止後の復帰を決断するきっかけだったようです。映画界に戻るための動機が、自らにとって最も身近で信頼する存在との創作であったことを示唆しています。
復帰後の脚本オファーについては、「殺到しているわけではない」と彼自身が語ったと報道されています。それでも「仕事をするという考えには前向きです」と強調し、自身の俳優としての意欲を示しました。彼がオファーを慎重に選ぶ姿勢を転じて、「量より質」を重んじる職人気質の延長線上に復帰の道を置く可能性も感じさせます。
今後の展望と期待
デイ=ルイスの復帰は、映画界にとっても象徴的な再出発です。これが一作限りの試みなのか、それとも新たなキャリアの再始動となるのか、その行方はまだ確定していません。とはいえ、彼が今後も心から共鳴できる物語にのみ関わろうという意向を示している以上、再びその演技をスクリーンで見る機会は十分に期待できます。
復帰作となる『アネモネ』は、親子の絆、世代間の確執、自己との対話といったテーマを扱う作品と報じられており、彼の演技人生における意欲的な選択の表れと受け取る向きもあります。
かつて「引退」を公言したかに見えた彼が、その言葉を否定し、自らのペースで表現を再開したことは、まさに “沈黙の後の帰還” と形容するにふさわしいものでしょう。今後、彼がどのような新たな“変身”をスクリーンにもたらすのか、映画ファンの期待は高まるばかりです。
参考リンク
- BBC News: Daniel Day-Lewis back on screen after seven-year hiatus: ‘I never used the word retirement’
- The Guardian: Daniel Day-Lewis says he ‘never intended to retire, really’
- The Guardian: Daniel Day-Lewis ends retirement from acting after seven years
- AP News: Daniel Day-Lewis ends acting retirement for a movie directed by his son


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