スキプトンで始まった“物の図書館”とは
英国・北ヨークシャーのスキプトンで、2024年7月に「Library of Things(ライブラリー・オブ・シングス)」がオープンしました。従来の図書館のように本や雑誌、映画を貸し出すのではなく、ドリルや望遠鏡、ライフジャケット、テント、スポーツ用品など、家庭で“ときどきだけ使う”日用品を借りられる仕組みです。購入を減らして共有を促すことで、暮らしと環境の両面でムダを抑える狙いがあります。
狙い:たまに使う物は「買う」から「借りる」へ
取り組みの核心は、持続可能性と地域コミュニティの活性化です。必要な時だけ借りることで、個々の所有物を増やさずに用途を満たし、結果的に資源消費や廃棄を抑えられます。スキプトンの住民にとっては、保管場所や初期費用の負担なく、必要な道具にアクセスできる利点があります。
利用者の声:節約から始まった新しい習慣
利用者の一人、スーザン・マレットさんは職を失ったことをきっかけに支出を見直し、DIYに挑戦。最初は壁紙剥がしやはしご、ドリルなど基本的な工具を借りていましたが、次第に幅木の取り付け用にマイターソーを借りるなど、用途に応じてアイテムの幅を広げていきました。「大きな用事の前にはまずここで『何を借りられるだろう?』と考えるようになった」と話し、所有から共有へ意識が変わったといいます。
仕組みと料金の考え方
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サービスは会員制で、年間会費(例:10ポンド)を支払い、品目ごとに有料または無料で借りられます。無料対象のアイテムも多数揃えているため、初めての人でも試しやすいのが特徴です。品揃えは地域からの寄付や協力で拡充され、ボランティアとスタッフによって運営されています。
地域に生まれる効果
「Library of Things」は家庭の出費や保管負担を減らすだけでなく、道具の使い方や工夫を共有する場にもなります。住民同士が道具選びや活用法を教え合うことで、地域の交流が生まれ、スキルや経験が循環していきます。環境面でも、個別購入の削減は資源の節約と廃棄物減につながり、持続可能な暮らし方の実践例となります。
今後の展望
スタートから間もない取り組みですが、ニーズの高い季節用品やDIY工具を中心に、品目の拡充が期待されます。地域の参加が増えるほどラインナップは充実し、より多くの住民が「買う前に借りる」を選びやすくなるはずです。図書館が本だけでなく生活の道具も循環させる拠点になる——そんな新しい公共のかたちが試されています。
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