フランス政府がパレスチナ国家を正式に承認しました。エマニュエル・マクロン大統領はニューヨークで開かれている国連総会の場で、停戦と和平の必要性を強調し、ガザでの戦闘継続を正当化できないとの立場を示しました。今回の決定は、二国家解決(イスラエルと将来のパレスチナ国家の共存)をめぐる国際的な働きかけの一環として位置づけられ、同様の動きを見せる国々の流れにフランスが加わった形です。
発表の位置づけと背景
フランスはこれまで、中東和平の前進にはパレスチナ国家権の承認が不可欠だとして、国際的な枠組みづくりを後押ししてきました。今回の承認表明は、長期化するガザ情勢の悪化を受け、国連総会の議論に合わせてフランスが自国の立場を明確化したものです。大統領は「平和の時が来た」と訴え、二国家解決に向けた具体的な工程に各国が関与すべきだと促しています。
各当事者・関係国の反応
イスラエル側は、承認がハマスを利するという懸念を繰り返し表明しており、2023年10月7日のイスラエル南部への攻撃(約1,200人が死亡、251人が人質となったとされる)を念頭に、国家承認は「誤ったメッセージ」だと警戒を強めています。イスラエルのダノン氏(Danny Danon)は、10月7日以降は二国家解決は「テーブルから外れた」と主張し、国連での協議を批判しました。
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一方、パレスチナ側は国際社会の承認拡大を歓迎し、和平の必要性を訴えています。マフムード・アッバス議長は、暴力ではなく政治的プロセスを通じた解決を改めて求め、イスラエル市民に向けても平和の重要性を呼びかけました。
欧州内の議論と国内世論
欧州では、すでにスペイン、アイルランド、ノルウェーなどが承認に踏み切っていますが、なお慎重論もあります。イタリアでは多数の都市で親パレスチナのデモが行われる一方、メローニ政権は「実体の不明瞭な国家承認は逆効果となり得る」との見解を示すなど、各国で温度差が見られます。フランスの今回の決定は、EU 内での議論を一段と活性化させる可能性があります。
人道状況をめぐる数字
ガザ地区のハマスが運営する保健当局は、これまでに6万5千人以上のパレスチナ人がイスラエルの軍事行動により死亡したと発表しています(当局の集計に基づく数字であり、独立検証は別途必要)。フランスは、この深刻な人道状況の改善と、停戦に向けた外交努力の加速を主張しており、二国家解決を視野に入れた政治プロセスの再起動を国際社会に求めています。
今後の論点と不明点
承認は象徴的な意味を持つ一方、和平交渉の進め方、治安・統治の枠組み、ガザとヨルダン川西岸を含む領域の最終的な地位など、具体設計はこれからです。イスラエル、パレスチナ双方の対応、米欧を含む主要国の関与、地域諸国の役割が、プロセスの成否を左右します。現時点では、フランスが今後どのような外交措置や支援を積み上げ、どの国々が追随するのかはなお流動的です。いずれにせよ、暴力の応酬を止め、人道支援と政治対話を両立させる道筋づくりが急務となっています。
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